もくじ
安静時呼吸と活動時呼吸
呼吸は、身体の中で「常に起こっている動き」であり、腹腔内圧(IAP)は呼吸により変化します。
- 安静時呼吸
- 活動時呼吸
呼吸をこの2つに分けた時、呼吸機能を見る上での重要なポイントは以下のようになります。
1.安静時呼吸
【吸気】
横隔膜が主となること
【呼気】
胸郭(主に肋軟骨)が柔らかく、周囲の組織が緩んでいること
(吸気からの反動のエネルギーを受け、胸郭と肺の持つ弾力性により受動的な縮小が起こる。立位では重力による肋骨の受動的な引き下げも加わる)
みぞおちが潰れてなくて柔らかいのも大事。
普通に座っているくらいなら、首や肩をみても呼吸がみえないくらいがいいね。
クライアントさんが呼吸しているのをよく見てごらん。
安静時呼吸をよくすることができなくては、身体の不調を改善することができないからねいからね。
2. 活動時呼吸
【吸気】
横隔膜が主となること
腹筋群が横隔膜の共同筋として適切に機能すること。
【呼気】
横隔膜は弛緩
腹筋群は胸郭の下側の口を骨盤のほうに引き下げ胸郭をすぼめます。
同時に腹筋群の力は腹腔内臓器を胸郭に押し上げることで、横隔膜の腱中心を上昇させます。
運動などにより換気量が多くなるとき、腹筋群と横隔膜の拮抗ー共同関係がうまくいくと、呼吸補助筋の不必要な緊張を抑制することにつながります。
腹筋群と横隔膜の拮抗ー共同関係
では、活動時呼吸における腹筋群と横隔膜の拮抗ー共同関係を見てみましょう。
【吸気】
- まず横隔膜の中央部にある腱中心が下がります。
(図の青色の線で囲った部分)
〈これにより胸郭の垂直径(縦の長さ)が増大し空気が肺に入ります。〉
- 次にその腱中心を、腹腔(臓器の「かさ」)が下から受け止め支持します。
(下図:斜線入りの大きな矢印)この時、腹筋群の働きで腹腔が安定していることで横隔膜が次の動きの足場を確保します。
これにより、今度は腱中心が固定点となり、横隔膜の収縮が下部肋骨(7~12肋骨)を挙上するように働きます。
〈肋骨下部が横に広がると、胸骨の介在により自動的に胸郭上部が挙上し前後に拡大します。これにより胸郭の体積がさらに拡大します。〉
このとき、内臓が下からクラゲを支えてくれていることが必要。
そのために外側から腹筋群が協力するってことさ。
吸気において横隔膜は、腹筋群の働きによる安定した内臓器の「かさ」を足場として、起始と停止の役割を入れ替えているのです。
この機序がうまくいっているかは、腹部が360方向に拡張しているかで確認できます。
それは腹筋群は、肺の拡大に押されて下がる腹腔を抱え込むように伸長性収縮をしているからです。
つまり、腹筋群は伸長しながらも横隔膜にたいして共同的に働いているのです
さらには、このとき骨盤底筋群が、おりてきた腹腔を下から押し返すように働くことができると腹腔内圧(IAP)が高まり体幹部が安定します。
ちゃんと呼吸できると、腰も安定するんだぞ。
【呼気】
横隔膜は弛緩します。
腹筋群は胸郭の下側の口を骨盤のほうに引き下げ胸郭すぼめます。
同時に腹筋群の力は腹腔内臓器を胸郭に押し上げることで、横隔膜の腱中心を上昇させます。
完全呼気においては、特に後面(背中側)で内臓器が胸郭内にしっかりと持ち上がるところまで吐き切れることが理想です。(肋骨横隔洞の閉鎖)
胸郭の下の口が前に広がったまんま。
いわゆるリブフレアってやつだな。
下の写真を見てちょ。
リブフレアで肋骨が固まっていると、次に出てくるZOAも確保できないんだ。
↑リブフレアした状態
↑リブフレアしていない状態
リブフレアが改善されない時は、まず「ゆっくり長く息を吐く」ことから始めるといいよ。
高齢者などには、ストローをくわえて、息を長く吐く練習をしてもらうのも安全で効果的だよ。
ZOA:ゾーン・オブ・アポジション
Zone of Apposition (ZOA)とは、ドーム型の構造が、どれくらい可動性を持つかを示した言葉です。
横隔膜のドームは横から見ると赤で示したようになります。
ZOAは、横隔膜が呼吸筋として最適化できているかの目安になります。
活動時呼吸で示したように、横隔膜と腹筋群の拮抗ー共同関係がうまく機能すると横隔膜の可動範囲が大きくなり、ZOAが確保されます。
もしくは、ZOAが確保されていると横隔膜と腹筋群の拮抗ー共同関係がうまく機能するとも言えます。
卵が先かニワトリが先かだね。
からだに関することは「卵ニワトリ」なことが多いんだ。
ってか、ほぼそればっか(笑)
また、ZOAが確保されていると、横隔膜が呼吸筋としての機能を発揮しますので、呼吸補助筋の活動が抑制でき、体幹が安定し、肩や腰がらくで、さらには疲れにくい身体を得ることが期待できます。
特に、リブフレアしているクライアントに対しては、先ずは腹筋群を活性化し息を吐き切れるようにするとこが大切です。
このことで、胸椎の伸展を抑制し、肋骨の可動性の回復を目指します。
だけど、その前に安静時呼吸のままで、胸とお腹に手をおいてもらって、自分の肋骨やお腹がどうなっているか感じてもらうだけで、リブフレアが落ち着くことも多いんだ。
いつも力技ばっかり考えない方がいいかもね。
胸郭と骨盤
腹腔は骨盤と胸郭の間にありますので、この2つの位置関係も呼吸機能と腹腔内圧(IAP)に大きく関係します。
骨盤と横隔膜のドームが相対するポジションをとることで、腹腔は楕円の圧が逃げにくい形をとることができます。
また、ZOAの確保においても、横隔膜のドームが骨盤と相対し、骨盤底で内臓器が下からささえられていることが前提となります。
そうすると腹腔内圧(IAP)が保ちやすくなり、呼吸そのものが床からの反発力をもらえるようになります。
このようになると、身体が軽くなり、疲れにくくなります。
(この図では、注射器の吸引は、横隔膜が下がることで肺に空気を引き込む様子を示しています。)
対して、図の右のように、骨盤と横隔膜のドームが骨盤と相対していないと、呼吸のたびに姿勢不良を加速してしまうか、呼吸が腰や肩などの不具合を引き起こす恐れがあります。
1日2万回も行われるという呼吸において、このことは、身体に大きく影響します。
1時間で720~1200回
24時間で、、、
17280~22800回!
補足:呼吸に関連する筋
最後に、呼吸に関する筋を主動筋と補助筋に分けた表を添付します。
補助筋はたくさんあり、本によって様々な筋が書かれていたりします。
このことは、人はうまく呼吸できない時、生きていくために、胴体部の筋のみならず肩や首の筋や、さらには腕や脚を動かすための筋までも動員して呼吸しようとすることを表していると言えるでしょう。
主動筋 | 補助筋 | |
吸気 |
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呼気 |
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(※このブログで腹腔と表現した場合、注釈がなければ腹腔骨盤腔を指します)
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